スティーブンユニバースの45話を語らせてください。

◆スティーブンユニバースの為、2月にカートゥーンネットワークに加入して早半年。3月にやっと観ることができた第45話「ローズの剣」(原題:"Rose's Scabbard")がTwitterでの前評判通り衝撃的で、どうにか感想妄想考察をまとめたいと考え続けた結果とうとうはてなブログに登録する事になりました。

私のひと言で表すと「ヤバい…」で終わってしまうので、このアニメを知らない人にも分かりやすいように「どこがどうヤバいと感じたのか」を順を追って説明して行けたらいいなと思います。どうかお付き合いください。

【注意:日本未上陸のエピソードについても言及している為、日本国内の放送のみを追っている方には若干のネタバレがあります。】

 

◆物語の概要と登場キャラクター

www.nicovideo.jp

記事を書き始めたのが今年の8月なのですが、この物語をどこから説明しようか悩んでいたところ日本CNがハイクオリティのダイジェスト動画を配信してくださったので、有り難くご紹介させていただきます。

(ただ1つマズかった箇所として動画後半でシーズン1クライマックスのネタバレが唐突に含まれていたので、上記の動画では該当シーンをカットさせていただいています。申し訳ありません。ネタバレ部分有りの公式版は上記動画の説明文リンクより飛んでください。)

 

◆45話の内容と感想妄想考察

f:id:applecandy227:20170901132057p:plain

5,000年以上前の地球で行われたジェム同士の戦争跡地へやって来たクリスタルジェムズ。「いつ必要になるかわからない」と言うガーネットの発案で、戦場に残された数々の武器を回収に来たのでした。そんな中ジェムズは、ピンクのライオンが掘り起こしたローズの剣の鞘を見つけます。ローズの私物が見つかりテンションMAXになったパールさんはいかにローズが素晴らしかったかを語ります。

f:id:applecandy227:20170901132052p:plain

ここの4人の反応の違い(かつての戦争に参加したガーネット、パールは驚く。戦後生まれのアメジスト、スティーブンは事情が分からず2人を見つめる)やパールさんの長台詞に呆れるアメジストも、一瞬なのに仕草が細かくて好きなシーンです。

帰宅後、パールさんはローズの剣の鞘を愛おしそうに見つめます。

f:id:applecandy227:20170901132044p:plain

可愛すぎません?

そしてスティーブンに「すごく勇気があって、とても賢くて…美しかった。」とローズについて話した後「あなたが持っておきなさい。」と鞘を渡し

「スティーブン、それは鞘だから。あなたのママの剣を収める為のね。それ以外のどんな剣も合わない。今までもこれからも、ずっと不完全なまま…。

と話します。ここの台詞には鞘に自身の気持ちを重ねている様にも聞こえました。

この回の少し後の67話「チームメイト」では、パールさんは身勝手な理由から仲間を騙してしまい、その事を謝るシーンで身体が愛で出来ているガーネットの存在を「完璧なあなた」と語り「あたしはただのパールで1人じゃ何もできない。どうしたらいいか誰かに教えてほしいのよ。」とも話していました。

www.youtube.com

テーマソング完全版の歌詞やこの回の終盤でも「ローズの為に地球に残る」と発言する通りパールさんの生きていく、存在する為の1番の理由は『ローズの為にです。ジェム達は遠い惑星からやって来た宇宙人なのに、こういう健気でいじらしい所が凄く人間っぽくて惹かれます。好きです。

 

◆人間という種に対しての理解度

スティーブンが「(鞘を)完全にしようよ。剣はどこ?」と尋ねたので、パールさんは他2人に内緒でワープして、スティーブンを「ローズがパールさんだけに教えてくれた秘密の武器庫」へと案内します。f:id:applecandy227:20170901132036p:plain

「ここからたったの3時間で着くわ!垂直方向に登って行くだけよ。大丈夫そう?」f:id:applecandy227:20170901132029p:plain

大丈夫なわけあるか

さて、一見ギャグシーンですが『ジェム(特にパールさん)は時間のとらえ方が人間と違う』描写や『ジェム達は人間の事をイマイチ理解できていない』シーンは今までにもありました。

例えば28話「宇宙をめざせ」では、納屋のガラクタを改造し即席の宇宙船を作り上げたパールさんは、夜中にこっそりスティーブンを乗せて空に飛び立ちましたが、騒音でグレッグにバレてしまいます。その際の通信機越しの会話が

パール「何も問題はないはずよ、一番近い星に行ってくるだけだから。50年後には戻ってくるわ。

グレッグ「何!?50年後には私は死んでる!パール、今すぐ息子を戻せ!」

 だったり(この後なんとか戻ってこれました。)

50話「動かす力」ではビーチシティを停電させてしまった際、苦情を言いに来た市長さんに

「大袈裟に騒がないで。人間は何千年も電気無しでやってきたんだから。狩りをしたりしてね。あれはどうなっちゃったの?」

と言ってしまったり(フォローを入れると、この時すでに故郷の惑星からの刺客が地球に迫っており、その対策に追われ停電に構っていられなかった。)

さらに日本未上陸の115話、なんとグレッグが故郷の惑星の統治者に宇宙へ攫われてしまう事件が起こったため、手に入れた宇宙船で救出に向かうのですが、船内での会話(私の意訳です)が

パール「えっと……今の速度だと……ヒューマン・ズーまで約70年かかるの!グレッグの110回目の生存記念日には間に合うわ!

スティーブン「パール、僕のパパはそんなに長生きできるほど健康じゃないんだ。」

パール「それじゃあ……109歳までは長生きできそう?

 …だったり。こうして列挙してみると何気にグレッグ絡みのシーンが多いですね。(パールさんがあまり人間と交流しない、というのもあるのでしょうが。)

きっと100年もの歳月を短く感じるジェムズにとって、ローズが消えてしまってからの13年間はとても目まぐるしく、あっという間だったのだろうと思います。

ローズを敬愛するパールさんは、今でもローズさんが消えてしまった日の事を、つい昨日の出来事の様に感じているのかもしれません。

ともかく、本編が1話10分ほどしかないこのアニメに、ワープパッドという便利な設定があるにもかかわらず、直接武器庫へと行かず、わざわざこの会話を挿入したのは『ジェム達は人間の事をイマイチ理解できていない』ことを45話を観ている視聴者の頭の片隅に置いていてほしいという意図、配慮なのではないかと感じました。(もしくは後半のシリアス展開前の清涼剤?)

 

◆パールさんの自負心

f:id:applecandy227:20170901132230p:plain

スティーブンを背負い崖を登り始めたパールさんは、とても重要なことを話しています。

パール「あたしはローズの唯一の親友だったの!彼女の誰にも言えない秘密を聴くのが、あたしの役目だった!

スティーブン「なんでそんなに秘密を持ってたの?」

パール「そうでなければ駄目なのよ!偉大なリーダーはみんなそうなの!守ろうとしている相手に何を隠さなきゃいけないか知ってる。…でもあたしは例外だった!ふふっ!

58話「剣の誓い」や74話「愛がすべて」の回想では『ローズを守る為に進んで前線に飛び込んでいくパールさん』が描写されていました。また日本未上陸の98-99話(台詞は意訳です)で、とあるジェムに「君は誰に仕えているんだい?」と聞かれ「そんなの居ない!(Nobody!)」と自信をもって即答していました。

先の台詞からも読み取れるように、おそらくパールさんはローズと対等な存在で居たかったのだと思います。私はSUの視聴を始める前にYouTubeでテーマソング完全版を観ていたので、歌詞の先入観からてっきりパールさんはローズに仕えているのだと思い込んでいました。

なのでパールさんの「作られた目的としての『召使いのパール』ではなく、自分を自由にしてくれた『革命家のローズ』と肩を並べて生きてゆきたい。と考えて行動する生き様にめっちゃ萌えました。好きです。

 

f:id:applecandy227:20170901132235p:plain

また私はこのシーンは物語の考察においても重要ではないかと考えています。

例えば日本未上陸の115話では、パールさんがかつて故郷の惑星に仕えていた事が判明しました。もし以前の主人もパールさんに「誰にも言えない秘密」を打ち明けていたのだとしたら、物語の終盤で起こってしまうであろう故郷の惑星軍との対決時、クリスタルジェムズは非常に大きなアドバンテージを得ている可能性があります。

……他にはスティーブンのあまりにピュアでピンポイントな質問で『もしやローズはそれほど重要でないことも(パールさんの自負心を満たすため)秘密と称して話していたのかも?』と少し穿った見方をしてしまったり……ここはちょっと考え過ぎかもしれません。

再度申し上げますが、このアニメは本編が1話10分ほどしかないため、キャラクターの台詞やシーン選択が非常に洗練されています。なのでキャラクターの一挙一動やふとした台詞に後の重要な伏線、布石が仕組まれていることが少なくありません。さらに大体のお話がその回単体でもストレス無く視聴できる様に細やかな配慮がされています。

このアニメは視聴者の予想を気持ち良く裏切ってくれます。考えすぎても飛び越えられます。(o・∇・o)<スゴイデス! だからみんなも考察しよう!

それにしても崖登りの3時間中ずっとパールさんの話に付き合っていたのかもしれないと思うと、スティーブンがめちゃめちゃいい子で泣けてきます。

 

◆パールさんのホログラム機能

目的地に到着したパールさんは自信たっぷりに「クリスタルジェムズの中でも自分しか知らない」秘密の武器庫を紹介します。しかしそこは18話「映画を観に行こう」でピンクのライオンがスティーブンを無理やり連れて来た洞窟と同じ場所だったのです。他の場所と間違えているんじゃない?と慌てて問うパールさんに、スティーブンがライオンの事を話すと彼女はとても驚きます。それもそのはず、ライオンの初登場回は10話「親友はライオン」であり、クリスタルジェムズに加入したのはつい最近の出来事なのですから。

f:id:applecandy227:20170901132222p:plain

この辺りから段々と雲行きが怪しくなっていきます。ちなみに現時点で本編は約4分程しか経過していません。

スティーブンが18話で覚えた通り、母から受け継いだジェムの力を使って武器を召喚し、自分で勝手に付けた名前を言う間、普段のパールさんなら優しく得意げに教えてくれたであろう知識をまるで自分の記憶を確かめるように、少しきつい表現をすると「スティーブン相手に自分のローズに関しての知識量を張り合うかのように」武器の名称を訂正し続けていました。

ひと通りの武器を紹介し終わったスティーブンは、ひと通りの訂正を終えたパールさんに「何を探すんだっけ?」と尋ねてしまいます。その途端パールさんは堰を切ったように

「剣を探すの!貴方のママの剣よ!?刃が真っ直ぐなピンクのサーベルで、柄の色は赤、薔薇の形の柄頭で、鍔には葡萄の蔦の模様……!

 

f:id:applecandy227:20170901132215p:plain

と、剣の特徴をスラスラと語りながら額のジェムから映像を空中投影しました。

パールさんは一般的なジェム達同様にジェムから自分の武器を取り出せる他、そこからホログラム映像を投影したり、武器以外のアイテムを4次元ポケットの様に出し入れしたり、更には分身を複数作り自立行動させる能力を持っています。

www.youtube.com

ところが3話「チーズバーガーリュック」(公式無料本編なのでぜひ観てね!)では作戦の説明時、仲間と自身のホログラムを投影したのですが

f:id:applecandy227:20170901132208p:plain

ギャグシーンだとしてもここまで映像に差が出るものでしょうか?

(書いていて思い出しましたが、26話「海を取り戻せ」の序盤でもリアルなラピスラズリの立体映像を投影していましたね。やはりシリアス補正でしょうか。)

今回は単にパールさんのローズ関連の記憶力が凄いのか、はたまた彼女が常にローズの側にいたから覚えていたのか……。

話を戻し、45話では剣の説明後、スティーブンの「あぁ~それなら知ってる。」という台詞により一度帰宅することになりました。


◆揺らぐ根幹

f:id:applecandy227:20170901132505p:plain

帰宅後、玄関に集合したジェムズはスティーブンがライオンのたてがみから剣を取り出す所を見せてもらいました。みんなはローズとライオンの間にどんな関係があったのかと話し始めます。

パール「…でもローズはライオンなんて飼ってなかった。」
スティーブン「ここにママの物が入ってるみたい。」
パール「違うわ、ライオンなんて居なかった!もし居たらあたしが知らないはずないじゃないの!
ガーネット「ローズが秘密にしていたことは、沢山あるからな。」
パール「でもあたしには違ったわ!あたしにだけは全て話してくれた!」
アメジスト「ローズのこと恋しいのはアンタだけじゃない!」
パール「あなた達に、あたしの気持ちが分かるもんですか!ローズとは特別な関係だったんだから!
スティーブン「きっとママはパールの事も守りたかったんだよ。」

ちなみに測定したところ言い争いはキッチリ30秒でした。

残念な事にパールさんが取り乱すまでの他3人の台詞は全てパールさんの築いてきたアイディンティティを揺らがせてしまう物ばかりでした。このアニメは本当に台詞の取捨選択が洗練されていると思います。

ガーネットとアメジストの台詞では「ローズに自分の知らない一面がある」という、普通なら当たり前のような事も、立て続けショックを受けている彼女にはきっと辛いものだったのでしょうし、まさかつい最近チームに加入したポッと出のライオンが「自分の知らないローズ」を知っているなんて思いもしなかったのだと思います。

ここが1番辛かったのですが、スティーブンの言った「きっとママはパールの事も守りたかったんだよ。」と言う台詞は、ついさっき崖を登る最中にパールさんが話した内容を受けた、とても思いやりのある発言だと思います。

しかし直前まで怒涛の台詞と展開で精神的に追い詰められた上「ローズと対等な存在で居たかった」彼女にとっては「私はローズに守られていた弱い存在だったのではないか」「私はローズの心からの信頼を得られていなかったのではないか」という疑念を抱かせるトドメの台詞になってしまいました。

f:id:applecandy227:20170901132457p:plain

最初の方に書いた通りパールさんの存在理由はローズであり、「自分はローズに守られるような弱い存在で在りたくない」と考えています。自分の根幹を揺らがされたパールさんは、ついにスティーブンに対し

「あなたに何が分かるの!?会ったこともないくせに!」

と言い放ちます。故意ではありませんが心を傷つけられ続けたパールさんは、自分の受けたショックと同量以上の痛みをはね返すようにスティーブンが最も傷付く部分に言及してしまいました。

私はかつて14話「ラースとクールな仲間達」で友達にローズの事を悪く言われたスティーブンが

「お前にママの何が分かる!?息子の僕にも分からないんだぞ!」

と怒鳴ったシーンを観ているので、このパールさんの台詞は思わずテレビの前で絶叫してしまうほど衝撃的でした。ご近所からクレームが来なくて良かった。

さらに日本未上陸の120話(台詞は意訳です)、家族が家を空けている際に、スティーブンはローズの部屋で一人

「いつも聞かされていた『素晴らしいママ』に近づけるように、どれだけの努力が必要か常に考えていた。

髪をピンクに染めようかと何度も考えた。

 と胸の内を吐露していました。

ローズが消えてしまった事をスティーブンが気にしていない訳がないと、彼女自身分かっていたはずなのに、それでも言わずにはいられなかった程に余裕が無かったのかと考えると胸が痛みます。

f:id:applecandy227:20170901132451p:plain

f:id:applecandy227:20170901132444p:plain

f:id:applecandy227:20170901132436p:plain

先述の台詞を放ったあとにパールさんが壁を殴った衝撃で、玄関に飾ってあるローズの肖像画が彼女の頭上に落ちてきました。この一連のシーンは秘密の武器庫から帰宅した直後なので、通常ならワープパッドの側でスティーブンが剣を取り出すのが自然な流れのはずです。

アニメの演出的な話になりますが、私にはパールさんの上にローズの肖像画を落とすためだけに、わざわざこのシーンの舞台を玄関に設定した様に感じられました。また落ちて来た肖像画を見て『きっとこの場にローズが居たら、今の台詞を聞いてパールさんに手を上げてしまっているんだろうな。』とも感じました。最もローズが今もクリスタルジェムズに居れば、こんな言い争いは起こりもしなかったのだろうとは思いますが……。

幸いガーネットが受け止めたお陰で肖像画もみんなも無事でしたが、我に帰ったパールさんは直前の出来事を思い出し、ワープパッドに向かって駆け出してしまいました。ワープ後に「どこへ行ったの?」と言うスティーブンにアメジスト「知るか!アイツこうなると最悪なんだ。」と言った事から察するに、今回のようなローズ関連の言い争いは、今日が初めてでは無いのだと思います。

f:id:applecandy227:20171101225600p:plain

ライオンにはパールさんの居場所に心当たりがあるようです。スティーブンはライオンと共に彼女を探しに行くことにしました。ガーネットには予知能力があるので、おそらくこの後の展開が見えていたのでしょう。後を追う1人と1匹の背中に「頑張れよ。」とだけ呟き、物語は終盤を迎えます。

 

◆表情と感情

f:id:applecandy227:20171101225549p:plain

f:id:applecandy227:20171101225535p:plain

ライオンが連れて来てくれたのは冒頭で訪れた戦場でした。パールさんはそこでローズの剣を抱き締め俯いていましたが、スティーブンとライオンが来た事に気付き慌てて逃げ出します。「そいつをあたしに近づかせないで!」と言いながら走っていたので正体不明のライオンをどう受け入れたらいいのか、この時点ではまだ心の整理が付いていなかったのでしょう。

f:id:applecandy227:20171101225524p:plain

パールさんは更に追いつかれないよう空の浮島へと飛び移ります。スティーブンは彼女を安心させるため、ライオンを置いて自力で浮島へとジャンプして後を追います。この間スティーブンはパールさんに呼び掛けつつ不安定な足場をサンダルでジャンプしたため何度も体勢を崩しかけます。

f:id:applecandy227:20171101225518p:plain

それでもなお振り返らず逃げ続けるパールさんは、ひときわ大きな浮島に辿り着き背を向けたまま「こっちにこないでってば!」と叫びます。「パール!僕なにか悪い事したの?だったらそう言ってよ!」という呼びかけにも答えなかったため、とうとうスティーブンは彼女の居る遠くの浮島へとジャンプします。その瞬間振り返ったパールさんの顔は

f:id:applecandy227:20171101225912p:plain

ひと言で形容するにはあまりにも難しい表情をしていました。私の主観だけで書くと「複数の感情が入り混じった表情」のように見えました。

カートゥーンでなくともアニメキャラの表情というものはお話を分かりやすく、視聴者が登場人物の気持ちを受け取りやすくするために、大抵分かりやすい記号の組み合わせで描かれています。これはポーズや仕草、振りに対しても同じことが言えます。

そして今回の表情は、吊り上がった眉、大きく見開いた目、食いしばった歯、の3つの要素で構成されています。それぞれの慣用句にもあるように一般的な意味は、怒り、驚き、悔しさと見事にバラバラです。

この直後、ジャンプの飛距離が足りなかったスティーブンは浮島に届かず落下してしまうのですが、その時にもパールさんの表情が確認できます。

f:id:applecandy227:20171101225907p:plain

この時も目は見開いたままなので、恐らく目元にはスティーブンがこの浮島まで自力でやって来ていた事に対する驚きが表れていたのだと思います。だとすると残り2つの眉と口には、スティーブンがやって来ている事を知る直前までの気持ちが表れているのではないでしょうか。そして恐らくそれはスティーブンに酷い事を言ってしまった自分に対しての怒りと、この世界にローズが居ない事に対する悔しさなのではないかと受け取りました。

f:id:applecandy227:20171101225902p:plain

f:id:applecandy227:20171103004043p:plain

f:id:applecandy227:20171103004038p:plain

ですがこの推測は数秒後に吹っ飛ぶ事になります。飛距離が足りずに落下してしまったスティーブンは浮島に生えていた蔦を掴み、間一髪のところで落ちずに済みました。ですがパールさんは上から一連の出来事を見ていたのにも関わらず、スティーブンを助けに行かず頭を引っ込めてしまうのです。

かつて12話「ジャイアント・ウーマン」では同じく浮島から落下したスティーブンをアメジストと共に救出していただけに「どうしてこのシーンでは助けに行かないんだろう?」と、正直記事を書いている今でも疑問が消えません。

今回はアメジストに協力してもらえないから?

未来の危機を察知したガーネットが来ていないので大丈夫だと思ったから?

人間の能力の限界をうっかり忘れてしまっていたから?

それとも助けようと手を伸ばそうにも遠すぎたから?

f:id:applecandy227:20171103004029p:plain

……あまり断定したくはないのですが、私はもしかしたらこの瞬間、ほんの一瞬であっても「スティーブンがこのまま消えてしまえばいい」と考えてしまったのかもしれないと受け取ってしまいました。自力で蔦を登りきったスティーブンが見たのはローズの剣を傍らに、胸を押さえて顔を覆うパールさんの後ろ姿でした。

私はこの仕草から彼女の心の痛みとショックの大きさ、恥ずかしさを受け取りました。もしも前述の私の考えが間違っていないのだとしたら、パールさんは自分の内から湧き出した感情が恐ろしくなり、足が竦んでしまい、助けに行く事ができなくなったのではないでしょうか。

 

◆パールさんによる過去回想

蔦を這い上がってきたスティーブンは、初めはむくれた声で呼びかけるのですが(助けに来てくれなかったので当たり前っちゃあ当たり前ですが)意気消沈しているパールさんを見るなりすぐに彼女を心配して「どうしたの?話してよ。」と言うのです。人間として立派すぎて本当にこの時点で13歳なのかと思わず疑ってしまいました。

その言葉を受けてパールさんはついに、ぽつりぽつりと語り始めます。

「時々、あなたがローズに思えるの。」

「此処を思い出せる?ローズの事を何か覚えてる?」

「あたしたちは、5,000年以上前に此処に居た。」

f:id:applecandy227:20171103004023p:plain

スティーブンに語りかけながら額のジェムから投影したホログラムはかつてのローズの姿でした。そしてそのまま過去の記憶の再現を始めます。

f:id:applecandy227:20171103004014p:plain

ローズ「私は此処に残り、この星のために戦う。あなたは私に付き合うことないわ。」

パール「あたしは残りたいんです!」

ローズ「そう言うと思った。でもお願いだから解って頂戴。私たちは負けたら滅ぼされる。でも勝ったら、もう二度と故郷へ戻れない。」

パール「あなたが此処に居るなら、戻れなくていい。」

 この一連のシーンの個人的に特筆すべき所は、一般的なアニメのように場面転換が起こり、記憶の中の映像が再生されるのではなく、場面はそのままで、パールさんが一人二役で台詞を当ててまで、2人の過去を客観的な視点から映していないという点です。

というのも、実はクリスタルジェムズの中でもローズとパールさんだけ、シーズン5の132話に至るまで、未だ詳細な生い立ちが明かされていないのです。アメジストの生まれは40話「旅に出よう」で本人の口から話され、その後未上陸の118話にて裏付けが取れています。ガーネットの生い立ちは74話「愛がすべて」にて場面転換 =(ここでは第三者から見た映像という演出的な意味と定義します)付きで語られています。

未上陸の98-99話において、とあるジェムがローズとの思い出をスティーブンに何度か話す際にも決して場面転換が起きず、ローズの過去の様子が映像として視聴者に明かされる事はありませんでした。これに関しては暴論を承知で書くと視聴者に「ここは信じてもいい箇所ですよ」と伝える演出をあえて入れていない様にも感じてしまいました。

またグレッグがローズとの馴れ初めを話す48話「パパの青春」や日本未上陸の過去回である94話では場面転換が入り、終盤まで一貫して第三者の視点からの映像になっている事も、この妄想の一因になっています。

このシーンではパールさんが5,000年前のローズの言葉と行動を一字一句一挙一動完璧に覚えており、かつ1人で完璧に再現できるという狂気にも似た愛を目の当たりにしたというだけでなく、この記憶自体が本当にあった出来事なのかすらも疑う事ができる演出に思えてしまいました。

 もう1つこの暴論の裏付け、と言ったら大仰ですが故郷の惑星の『召使いとしてのパール』を所持する権力者は、従者に対し「パール」と呼びかけているのですが、今回の回想内でローズはパールさんに向かって「私のパール」と呼びかけているようなのです。

しかし作中でローズが「私のパール」と発言したのは後にも先にもこれっきりなんですよね。(132話放送時点での話です。)

勿論ここに関してはクリスタルジェムズとしての活動中に「私のパール」と呼びかける事でチームの輪が乱れるのを避けて特別な時にしか使わなかったとか、そもそもローズが登場して喋る回自体が少ないとか、パールさんはローズに仕えている訳ではないので故郷の権力者と同じ呼び方をする必要は無いなど、反論要素はいくらでもあります。上位世界の魔女から探偵宣言が出されていないとキャラクターの主観を永遠に疑い続けてしまう癖を辞めたい。

流石にこの考え方にはあまりにも愛が無いため、私はパールさんの回想は実際の出来事だったと信じたいです。あくまでも「そういう風にも見えるね」ってだけの話なので、ただ私が必要以上に深読みし過ぎた結果の産物でしかありません。

f:id:applecandy227:20171103004304p:plain

f:id:applecandy227:20171103004259p:plain
 続くシーンではホログラムのローズが「私のパール」と言いながら、彼女へ手を差し伸べます。パールさんは「あなたは素晴らしい…」と言いながらその手を取るのですが、触れた瞬間ホログラムは消えてしまいます。

余談ですが私はここだけ繰り返し観ている内に、一連の再現は力の無い笑みや小さなため息に至るまで全てパールさんが台詞を発しているため、この最後の台詞だけどちらが発しているのか分からなくなってしまった事がありました。普通に考えてパールさんだとは思いますが。
言語版の台詞も確認したのですが、 "You're wonderful..." のみでした。文脈的にはどちらの台詞とも取れるので、今回は演出面から判断したいと思います。
 
ホログラムを出した後、引用台詞の直前まではパールさんとホログラムのローズの2人が一緒に画面に映り、同時に口を動かしていました。(=台詞は全てパールさんが喋っていますよ、という説明演出)
ですが「私は此処に残り〜〜」以降は台詞を発したとされるキャラクターしか映らないように画面が構成されています。なので「あなたは素晴らしい…」は該当シーンでメインに写っているパールさんの台詞だと判断しました。

f:id:applecandy227:20171103004309p:plain
ここのシーンが本当に凄いと感じるのは、パールさんが記憶の再演をしているのに彼女自身、目の前に居るホログラムを本物のローズの様に認識している点です。(だから差し伸べられた手を見て本当に驚いた顔をするし、触れた事で消えてしまったホログラムを見てようやく我に帰る。)

f:id:applecandy227:20171103004252p:plain

私はこの過去と現在が曖昧になる演出が、「これはどちらの台詞なんだろう」と考えた過程と重なって、まるで目の前のローズが本物なのか曖昧になっているパールさんの気持ちを追体験しているように思えてゾッとしてしまいました。流石に監督のレベッカ・シュガーさんもこんな捻くれた見方をする視聴者の事までは考えていないと思うのですが、正直なところ神の手の平で踊り狂うのはめちゃめちゃ楽しいです(余談はここまで)

 

◆スティーブンの気持ち

f:id:applecandy227:20171103004246p:plain

ホログラムが消え、パールさんは再び語り出します。

「全てローズの為に、やった事だったの。」

「彼女は消えたのに、あたしはまだ此処に居る。」

「ローズが、あなたの目を通して、あたしを見てる気がするの。

 …今のあたしをどう思っているかしら。」 

f:id:applecandy227:20171103004642p:plain

玄関での一件のあと、彼はどんな気持ちで彼女を追いかけて来たのでしょう。

母親の様に感じている存在から、故意ではありませんが酷い事を言われてしまった時の気持ち、それでも目に涙を溜めながら「大丈夫かな」と彼女を心配していた時の気持ち、彼女を探そうと決意した時、彼女を追いかけていた時、浮島から落ちそうになった時、彼女の記憶を聴いた時の気持ち。

スティーブンは彼女の背を見つめ、何度か考え、そして伝えます。

f:id:applecandy227:20171103004636p:plain

「きっと、立派だと思ってるよ。」

それはおそらくパールさんが何よりも言って欲しかった言葉。

そしてきっと、常にローズさんが思っていた気持ちに他ならないと思います。

f:id:applecandy227:20171103004626p:plain

 この後から台詞は一切なく、EDまで家に帰るまでのやり取りと美しいBGMが合わさった優しい時間が流れます。ここまでウダウダ書いてきましたがぶっちゃけ一度視聴していただいた方が遥かに素晴らしい体験ができます。

f:id:applecandy227:20171103004621p:plain

f:id:applecandy227:20171103004717p:plain

ライオンのたてがみの中へローズの剣をお片付けする2人。この時にパールも一緒に、という風に手を重ねるスティーブンが本当に素敵です。

f:id:applecandy227:20171103154951p:plain

f:id:applecandy227:20171103154941p:plain

f:id:applecandy227:20171103154934p:plain

f:id:applecandy227:20171103154928p:plain

たてがみから取り出したマジックセットを彼女に着けてあげるスティーブン。

スティーブンが見つけたローズの御旗を片手に過去の思い出を話すパールさん。

f:id:applecandy227:20171103154921p:plain

そして少しだけ不穏なラスト。朝焼けを背景に2人と1匹で帰る構図自体はこの上なく美しいのに、まだ若干空が暗い事と一度だけちらりとスティーブンに視線を向けるパールさん、さらに星マークで〆るいつもの終わり方でなくブラックアウトでEDへ入る演出から、まだこの出来事は終わっていないんだよと暗示しているかの様に感じられました。

ではこのお話はどの回に続いているのでしょう?

f:id:applecandy227:20171103154941p:plain

このアニメの素晴らしいところは数え切れないほどあるのですが、中でも小物の使い方が秀逸という点が挙げられます。45話のラストでは唐突にシルクハットが出てきます。このシルクハット、これ以降は物語に全然出てこないと思っていたのですが、

f:id:applecandy227:20171103155039p:plain

f:id:applecandy227:20171103155033p:plain

f:id:applecandy227:20171103155025p:plain

2017年のエミー賞にノミネートされ、全世界のファンから絶大な人気を誇るエピソード86話「ミスターグレッグ」 でこれでもかと登場していました。(日本では放送順の関係で87話とナンバリングされています)

内容から見て、まず間違いなく45話と86話は意識して制作されたと言ってしまって良いかもしれませんね。(86話も語り出すと止まらなくなってしまうので割愛します。)

 

◆最後に総括

ここまで破茶滅茶に長い妄想たっぷりの怪文書を読破していただいたあなた。お疲れ様でした!

本当は11月3日のスティーブン・ユニバース音楽祭までに書き上げたかったのですが、力が及ばず申し訳ありません。

ですが!!カートゥーンネットワークに加入すればSU始めとする素晴らしい海外アニメを視聴・録画できますので!!

この文章を読む体力をCN加入のお電話に使った方が遥かに今後の人生が豊かになります!!これだけは自信を持って断言できます!!

改めてここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!

スティーブン・ユニバースは最高!!